不動産売買仲介業の本分は、土地や建物の売却や購入を支援することにあります。
そのため、土地や建物については仲介手数料をもらうに値する知識が必要です。
とりわけ、土地取引において重要な調査といえば「道路」に関する調査。
知り慣れたわが町であればまだしも、郊外の取引になると道路の調査に苦戦する不動産仲介営業担当者からのご相談が後を絶ちません。
そこで、今回は不動産売買仲介業者の方々向けに道路について解説いたします。
重要事項説明書と並べて読むことで、より理解を深めることができるでしょう。
- 公道の取扱いばかりで、実は道路についてよくわかっていない
- 道路が建築にどのような影響を及ぼすのか、きちんと説明できない
このような悩みをお持ちの不動産売買仲介業者にはおススメの内容になっています。
ぜひ最後まで読み進めていただき、道路調査の重要性を知り、道路とは何かを理解しましょう。
なお、当所:Legal meでは、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県など関東を中心に不動産業者の方々より多くの物件調査のご依頼を承っています。
物件調査に関するご相談はLegal meまでお気軽にお問合せください。
道路とは?
不動産売買仲介業において、道路とは建築基準法で定められている道路のことを指します。
逆にいえば、建築基準法で定められていない道路は、道路ではありません。
しかし、なぜ不動産売買仲介では道路を把握することが重要なのでしょうか。
道路の詳細を知る前に、道路調査の重要性を知っておきましょう。
接道義務による再建築の可否がかわる
建築物の敷地は道幅4m以上の道路に2m以上接しなければならない、という建築基準法で定められたルールのことを接道義務といいます。
簡単に表現すると、以下の条件に一つでも合致しない土地では、建物を建築することはできません。
1. 道路に面していること
2. 面している道路の道幅は4m以上あること
3. その道路と土地が2m以上接していること
建物の建築が可能かどうかを判断するにあたって、接道義務を満たしていることを判別する必要があるのです。
容積率への影響
道路は土地の容積率へも影響を与えます。
土地にはその地域ごとに容積率が定められていますが、前面道路の幅によって容積率がさらに制限されることがあるからです。
なお、前面道路が容積率に与える条件は以下の通りです。
1. 前面道路の幅が12m未満であること
2. 住居系用途地域のときは、道路幅に40%をかける
3. その他の用途地域のときは、道路幅に60%をかける
例:住居系用途地域(容積率200%)で前面道路の幅員が4mであるとき
4m × 40% = 容積率160% < 容積率200%
この160%が容積率の上限となり、用途地域で定められている200%よりも容積率が下がることになります。
将来道路が通るかもしれない
今はなにもなくても、その土地には将来道路を通す計画があることがあります。
計画されている道路のことを「計画道路」といいます。
計画道路の予定地では、建築可能な物件が制限されます。
大きく計画の進捗段階によって、2つに分けることが可能です。
計画決定段階 | 事業決定段階 | |
---|---|---|
建築可能な物件 | 地階の無い2階建てまでで・木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの非堅固な建物 | 都道府県知事の許可が必要 |
根拠条文 | 都市計画法第53条 都市計画法第54条 | 都市計画法第65条 |
参考:e-GOV 都市計画法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=343AC0000000100
道路の調査を怠り、計画道路予定地であることを見逃していたときは、建物の建築ができない可能性があるのです。
道路の種類
これより、具体的に道路の種類について解説してまいります。
お手元に重要事項説明書のひな型があると理解が深まりますので、ぜひご準備のうえ読み進められてみてください。
道路法による道路(建築基準法 第42条1項1号)
国や都道府県、市町村、区の道で、幅員が4m以上の道路のことを指します。
この道路は、全て「公道」です。
重要事項説明書では、道路の種類として「建築基準法 第42条1項1号の道路」と記載されているものがこれにあたります。
開発道路(建築基準法第42条1項2号)
道路はさまざまな法律に基づいて新たに作られることが一般的です。
この「さまざまな法律に基づいて作られた道路」のことを「開発道路」と呼ぶのです。
開発道路は私道と公道の両方が存在しています。
開発道路と呼ばれる理由は原因となる法律に由来しており、その法律とは以下のようにまとめることが可能です。
・都市計画法における開発行為
・土地区画整理事業
・旧住宅地造成事業に関する法律
・都市再開発法
・新都市基盤整備法
・大都市法
・密集市街地整備法 など
重要事項説明書では、「同条第1項第2号の道路」と表現されています。
余談ですが、公道と私道が混在する理由についても知っておきましょう。
開発道路は、宅地造成や再開発の過程で接道義務を満たすために通す道路です。
そのため、開発途中ではまだ開発事業者の所有物、すなわち「私道」といえます。
すべての開発が完了すると、一般的にこの開発道路は行政に引き継がれます。
行政に引き継がれた時点をもって開発道路(同条第1項第2号の道路)は、第42条1項1号の道路となります。
しかし、一部の道路は引き継がれないため私道として残ることになるのです。
このような経緯があるため、開発道路は公道と私道が混在することを覚えておきましょう。
既存道路(第42条1項3号)
既存道路とは、建築基準法が施行されたとき、既に存在していた幅員4m以上の道路のことをいいます。
なお、建築基準法が施行されたのは1950年11月23日のことです。昔のことでびっくりしますね。
ただし、昔からあった幅員4m以上の道路であっても、現在国や都道府県、市町村、区が管理している場合は、1号道路(公道)になります。
そのため、既存道路は概ね私道であることが多いということができます。
重要事項説明書では、同条第1項第3号道路と表現されます。
計画道路(第42条1項4号)
法律によって2年以内に着工が予定されている道路のことをいいます。
上述した実行段階にある計画道路のことと理解してよいでしょう。
なお、2年以内に予定されているものとありますが、用地買収や道路工事が予定通りに進むとは考えにくいものです。
そのため、計画自体が抹消されない限りは、建築にかかる制限も抹消されないことに注意しましょう。
重要事項説明書では同条第1項第4号道路と表現されます。
位置指定道路(第42条1項5号)
特定行政庁に申請をして認められた道路のことを位置指定道路といいます。
分譲地内の全区画で接道を満たすように道路が作られているのを見たことはありませんか?
その道路のことです。
よく開発道路と混同される位置指定道路ですが、違いは簡単です。
開発道路は法律を根拠として作る道路であるのに対し、位置指定道路は不動産会社やデベロッパーが土地を区割りしたときに作る道路になります。
なお、位置指定道路という名称はその手続きに由来しています。
不動産会社が宅地造成などをして道路を作るとき、行政に対して「(道路の)位置指定申請図」という書面を提出するのです。
位置指定申請図に基づいた道路、なので位置指定道路、というわけですね。
位置指定道路は私道であることがほとんどです。
一部の通り抜けできる道路などは公道となることもありますが、稀な例といえるでしょう。
重要事項説明書では、同上第1項第5号道路と表現されます。
2項道路・みなし道路(第42条第2項)
2項道路・みなし道路とは、建築基準法施行時に既に存在していた道路で、幅員が4m未満の道路のことをいいます。
本来であれば4m未満の道路は建物を建築することはできません。
しかし、昔の道路は現在よりもはるかに狭かったのです。
そのため、4m未満の道路であっても、行政が「建物も建っていることだし、道路として認めましょう」と特別に道路扱いしてくれるようになりました。
これが2項道路・みなし道路です。
前面道路が2項道路・みなし道路であった場合には、再建築時の条件に注意しましょう。
その条件とは、「道路の中心線から2mセットバックしなければならない」というものです。
セットバックとは、自分の敷地の一部を道路にすることを意味します。
つまり、建築プランはもとより容積率や建蔽率にも影響を及ぼすことになるのです。
2項道路・みなし道路は重要事項説明書では、同条2項道路と記述されます。
セットバック(後退位置)についても記述が必要ですので、実測を忘れないようにしましょう。
法外道路(第43条但し書き、第43条第2項2号道路)
法外道路とは建築基準法上の道路とは認められない、すなわち建物を建築することができない道路のことです。
ただし、建築審査会に申請すると建築が認められることがあります。
建築条件などは市町村ごとに異なりますので、都度確認することが重要です。
重要事項説明書では、建築基準法上の道路に該当しません、と記載されます。
道路調査は不動産仲介の必須事項
今回は、不動産売買仲介業で反り立つ壁として名高い「道路」について、重要事項説明書への記載と並べて解説いたしました。
道路調査は建物の建築に大きな影響を及ぼすこと。
道路の幅員や種類によって、説明する内容が異なること。
これらの重要性を理解していただけると非常に嬉しく思います。
弊所:Legal meでは、不動産仲介業者の皆様に役立つ情報を随時発信してまいります。
また、関東圏で重要事項説明書の作成にお悩みの方や、物件調査を依頼されたい方は、お気軽に弊所までご相談ください。
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