不動産の売却や査定を依頼されたとき、仲介業者が主体となって対象となる不動産の調査を行います。
不動産の売買は、一生に一回体験するかしないかの大きなお金が動くやりとりです。
あとあとのトラブルを防止するためにも、どんな小さな失敗も許されません。
そこで今回は、売買不動産の仲介業者に向けて、不動産の物件調査について解説いたします。
- 不動産売買業務を始めて期間が浅く、物件調査に自信がない人
- 効率的に物件調査を行いたい人
- 今までやったことのない種類の不動産を調査する人
- 自社の商圏と異なるエリアの不動産調査をする人
ぜひ最後までお読みください。
なお、当所:Legal meでは、不動産関係者の方々から売却不動産の物件調査を承っております。
緻密な不動産調査に基づく重要事項説明書や契約書類は、競合他社との差別化を図ることにも役立ちます。
自社の調査精度を高めたい不動産業者の方々からも高い評価を頂戴しております。
一度お気軽にご相談ください。
不動産物件調査ってなに?
不動産の物件調査とは、売買や賃貸を目的として、主に仲介業者の営業担当者が行う不動産のさまざまな事柄を調査する作業のことです。
不動産の物件調査は取引や査定において非常に重要な作業ということができます。
- 契約者双方が不動産の概要を理解しておかないとトラブルに発展する恐れがあるから
- 不動産の概要を正確に把握しないと、正確な金額を査定できないから
これらの理由により、不動産の物件調査は正しい手順で厳格に実施することが求められるのです。
では、不動産物件調査の正しい手順とはどのようなものなのでしょうか。
これより、ステップごとに分けて解説いたします。
不動産物件調査の手順
不動産の物件調査は以下の4つのステップで行います。
どれも重要なものですので、何一つ省くことはできません。
各ステップごとにどのような調査を行うのか、細かく確認していきましょう。
売主や居住者へのヒアリング
売主や入居者へ不動産に関する基本的な事項について聞き取り調査を行います。
ここで確認すべき内容は以下のようなものです。
権利に関すること
不動産を所有・賃貸している権利について確認を行います。
不動産を処分・利用する権限を有しているかを確認することは基本中の基本です。
登記簿謄本や賃貸借契約書をもとに、本人確認を必ず行いましょう。
担保に関すること
不動産に担保設定があるかどうかを確認します。
住宅ローンや事業のために抵当権が設定されていることは珍しくありません。
そのときは、残債や支払状況まで確認しましょう。
また、差押などの不利益な登記の有無も登記簿謄本でチェックしてください。
状況に関すること
不動産のさまざまな状況についてもヒアリングを忘れてはいけません。
建物であれば設備に不具合が生じていないかどうか。
近隣の環境で気になることはないか。
過去に事件や事故、火事や水害に罹災していないかなど、確認事項は多岐にわたります。
これらのことを確認したら、「付帯設備表」や「物件状況確認書(告知書)」の作成に取り掛かることをおススメします。
売買契約の際に作成すると、思わぬ事態が発生することがあるからです。
媒介契約のタイミングで付帯設備表と告知書を取り付けておくと、契約がスムーズに運びます。
現地調査
現地調査とは、実際に不動産に赴いて行う調査のことです。
インターネットや地図で一定の情報を得ることができますが、必ず現地には足を運んでください。
現地に行かないとわからないことの方が圧倒的に多いからです。
現地調査では主に以下のようなことを調べます。
土地の状況
土地に傾きや土砂の流出がないか、目視できる範囲で埋設物がないかなどを確認します。
建物の状況
目視できる範囲で劣化や機能性を損ねているものがないかを確認します。
道路の状況
土地と道路の接道状況を確認します。
接道の長さと、接道している道路の幅員を実測しておくのがよいでしょう。
境界標の有無
現地に境界標があるかどうかを確認しましょう。
境界標や測量図をもとに隣地との境界を確認しておくことが重要です。
なかには、コンクリートブロックの中心が境界になっていることもあります。
境界を正確に把握していないと、関係者に迷惑をかけることにもなりかねません。
また、境界は売主の記憶と異なることがよくあります。
必ず現地での確認を怠らないようにしましょう。
そのほか、越境や被越境の状況もあわせて確認することも欠かせません。
わずかな植栽の越境であっても必ずチェックしましょう。
近隣の施設を確認する
不動産売買において、対象不動産の近隣状況を調査することは非常に重要です。
いくら対象不動産が優良なものであっても、環境が劣悪であれば優良とはいえません。
そのため、近隣環境を正確に把握することが求められるのです。
なお、環境に関するトラブルは係争に発展する可能性が非常に高いといえます。
以下の表を参考にしてみてください。
日当たりや景観に関するもの | 近隣に大きな建物の建築予定がないか |
危険性のあるもの | 高圧線・大型工場などがないか |
においに関するもの | 工場・畜舎・火葬場・ごみ処理施設がないか |
音に関するもの | 空港(経路を含む)・鉄道・地下鉄・大型車両が通行する施設などがないか |
心理的に嫌なもの | お墓・刑務所・留置所・葬儀場・火葬場・下水処理場などがないか |
役所調査
自治体の役所で行う調査のことを役所(役場)調査といいます。
実務では「役調(やくちょう)」と略して呼ばれることも。
役所で調査すべき内容は以下のようなポイントです。
法務局で行う登記に関する調査
法務局で土地や建物の登記を取得して、対象不動産の権利関係を確定させます。
差押や抵当権の有無についても登記で確認することが必要です。
また、字図(地番を記した地図のこと、「あざず」と読みます)も取得しましょう。
対象不動産の地番を確定させるほか、隣接地の状況を確認する必要があるからです。
そのほか、土地については地積測量図を取得することも忘れてはいけません。
地積測量図がないときは、一般的に売主の費用で地積測量を行います。
売主が行う理由は、境界の明示義務が売主にあるからです。
法令に基づく制限の概要
不動産に関するさまざまな法律により定められている規制の内容を確認します。
主な法律は以下のようなものです。
- 都市計画法
不動産が所在するエリアについて確認します。
都市計画区域や用途地域が主な確認事項です。
- 建築基準法
地域・地区・街区・建蔽率・容積率・道路などを調査します。
そのほか、用途地域等で定められている各種制限も確認が必要です。
道路に関する調査
不動産が接道している道路についても確認が必要です。
道路といっても以下のような種類があります。
- 1号道路
- 2号道路
- 3号道路
- 4号道路
- 5号道路
- 2項道路
ライフラインの調査
電気・水道・ガスなどの供給状況の調査を行います。
水道が使える、というレベルの調査では不十分です。
インフラ施設の調査ポイントは、大きく2点あります。
- 現在の状況
- 今後の変動可能性や、実際に住んでから利用するにあたりかかる費用
この2点を調査することが目的であることを忘れてはいけません。
調査にあたっては、以下のようなポイントに注意して調査を進めましょう。
上水
飲料水設備があるかどうか、上水道か井戸の別も確認が必要です。
配管の敷設状況も忘れずにチェックしましょう。
ガス
建物があるときは現況でガスの利用可否を確認します。
もちろん、都市ガスなのかプロパンガスなのかも把握しておかなくてはなりません。
ガスにおいても配管の敷設状況や利用権限に至るまで調査しましょう。
電気
電気の利用可否を確認します。
最近は電力の自由化により、供給会社も多様化しています。
地域の大手電力会社でないときもありますので、注意してください。
汚水
汚水とはトイレから排水される水のことをいいます。
公共下水もあれば、浄化槽の地域も珍しくなく、汲み取りのケースもあるでしょう。
雑排水
雑排水とは、キッチンや洗面所、浴室から排水される水のことをいいます。
こちらも汚水と同様にさまざまなケースがありますので確認を怠ってはいけません。
雨水
敷地内の雨水をどこに排水するかを確認します。
雨水の処理方法は地域により分流式・合流式に大別することが可能です。
現地や役所でその違いについても必ず確認してください。
不動産調査は種類ごとにポイントが異なる
不動産調査では、対象となる不動産の種類ごとに注意するポイントが異なります。
これより、不動産の種類ごとの調査ポイントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
分譲マンションの場合
分譲マンションの調査にあたっては、施設・設備のほか、管理組合および管理費・修繕積立金に関する事項を調査することが必要です。
管理費や修繕積立金は建物の命運を左右する、いわば分譲マンションの与信ということができます。
分譲マンションの調査では、管理会社へ費用を支払い不動産調査に必要な回答を得ることを忘れないようにしましょう。
一戸建ての場合
一戸建ての調査にあたっては、土地と建物の両面に気を配る必要があります。
なぜなら、一戸建ては土地はもちろんのこと、建物を利用することを前提に取引をすることが一般的だからです。
土地においては境界や越境・被越境の状況はもちろんのこと、地中埋設物の有無にも気を配りましょう。
建物では、雨漏りや設備の劣化などに注目すると良いでしょう。
土地の場合
土地の調査では、建物の建築を前提とした調査を行うとよいでしょう。
なぜなら、取引の目的の多くが建物の建築を予定することが多いからです。
越境・被越境の状況をはじめ、境界のチェックは言わずもがな。
地歴まで確認しておくと売主・買主の双方に対して安心感を与えることができるでしょう。
なお、地歴を確認する理由は以下のようなものです。
- 土壌汚染のリスクを回避するため
過去に工場の用途に土地を利用したことがあると土壌汚染のリスクが考えられます。
- 埋設物のリスクを回避するため
井戸や基礎の一部が地中に埋設しているリスクを図ることができます。
特に工場やガソリンスタンドの用途では、地中埋設物がある可能性を否定できません。
- 心理的リスクを回避するため
過去に工場やガソリンスタンドがあった土地にマイホームを建築することに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
- 水害や軟弱地盤リスクを回避するため
埋め立て地や水害の有無を確認することで、土地の軟弱性を知る一つのきっかけになります。
収益用不動産の場合
賃借人がいる収益用不動産を調査するときは、土地建物も重要ですが、賃借人の状況を精査することが必要です。
収益用不動産で賃借人の状況を把握するために必要な情報は以下の通りです。
- 賃貸借契約の内容と賃借人の質
- 稼働状況
- 不動産の管理状況(賃貸管理会社の管理品質)
- 近隣の相場や空室状況
不動産調査の注意点
不動産調査を行う上で、どのような不動産であっても注意すべきことがあります。
それは、以下の3点です。
なぜこのようなことが重要なのか、その理由に迫ります。
書面を残す必要性
不動産業者にとって調査の結果を項目ごとに分類し、書面に残すことは基本中の基本といえます。
なぜなら、重要事項説明や契約書に調査の結果を記載した内容について以下のことが欠かせないからです。
- 信頼性を担保する必要がある
- 記載内容に対して保険をかける必要がある
自社の信頼性を高め、内容を保証するためにも、必ず調査の結果は書面で残しましょう。
現地調査と役所調査の必要性
インターネットで調査できるものであっても、再度現地と役所での調査は必ず実施してください。
インターネットは便利なツールですが、間違いなく正確な情報であるとは限りません。
ときには役所の発表資料であっても不確実なものが存在することも事実です。
役所で知りえた情報をもとに、さらに現地調査を行うことで正確性はさらに増します。
正確性の高い調査こそ、自社の信頼性を高めるものになると心得ましょう。
複数回の現地調査の重要性
現地調査は一度きりで終わらせずに、日時を変えて複数回は訪問すべきです。
なぜなら、環境を知るためには一度では到底足りないからです。
過去には、日中はいない野良猫が夕方以降に集まってくることが取引後に発覚し、訴訟に至ったケースもあります。
こうなってしまっては、自社の信頼性は失墜したというほかありません。
調査不足と言われても、言い返すことなど到底できないでしょう。
些細なことに気付くためにも、現地調査は徹底して実施するようにしてください。
不動産調査は時間をかけて正確に行おう
不動産業者にとって不動産調査とは、一般の方では知りえない情報を集め、売主と買主の双方に理解してもらい、安心安全な取引を行うために書面に残す、いわば見せ場のようなものです。
不正確な情報や憶測で取引を進めることなどあってはなりません。
悪い噂は早く広まります。
自社の信頼を損ね、存続にも影響を与えると言っても過言ではありません。
そうならないためにも、不動産調査は時間をかけて正確に実施するようにしましょう。
なお、当所:Legal meでは、不動産業者の方々の営業精度を高めるためのサービスとして、物件調査の代行を行っております。
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